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最高裁判所第三小法廷 昭和50年(あ)29号 決定

本籍・住居

三重県三重郡朝日町大字埋繩九八九番地

農業

水谷雄幸

昭和五年一月一二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、昭和五〇年一月二三日名古屋高等裁判所が言い渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人本人の上告趣意は、事実誤認の主張であつて、刑訴法四〇五条の上告理由にあたらない。

よつて、同法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 関根小郷 裁判官 天野武一 裁判官 江里口清雄 裁判官 高辻正己)

昭和五〇年(あ)第二九四号

被告人 水谷雄幸

被告人の上告趣意(昭和五〇年三月一〇日付)

一、実質所得者について

被告人は法律に規定されている通り当時建設事業を請負事が出来ないにも係らず、国税査察担当官の判断のみで実質所得者と断定されるとは、法を護持すべき査察当局の越権行為であり人権の無視であります。水谷耕三郎は津地方裁判所で東海起業の代表者は自分であり事業の主宰をしていたと供述しているのであります事業を運用し遂行する帳簿類は水谷耕三郎で押収されたのであり被告人宅にあつたものは経理関係の書類のみであつた事実からも明白であります。

又、東海起業の所得の申告は水谷耕三郎に依つて申告され受理されているにも係らず国税査察当局の査察期間のみ被告人の所得と、断定される如きは当局として首尾に一貫性を持たない一方的判断であると言わねばならないのであります。

所得税の申告を耕三郎名儀でしたこと及び東海起業の事業主は誰であるかについて正直に答えて下さいの問いに対して当時被告人は本当は私の名前で申告すればよかつたのですが、その 耕三郎名儀で青色申告をすることにしましたと答弁してある旨記載してありますがこれは担当査察官の曲解で私は当時車両三台を所有して事業をやつていたのでその部分について申告すればよかつたと言つたのを前記の様に書き変えてあるのであります。

一、毎月一定額の生活費の支給を裁量したと判決文にあり又格別事業からまとまつた報酬、利益の分配にあづかるる事も無く此の種兄弟間の契約や合意も無かつたとあるのも事実と異る処であります。事実能部地内で取得した山林畑 不動産は水谷耕三郎名儀源郎名儀の物件があり入手した不動産の目標によつても誰の所有かは明々白々の事実であり、その取得した量からも誰の主宰か判断出来る問題なのであり又、会社移管後の財産引つぎからも誰の取得が多いか判定出来る問題なので関係証拠書類を証拠として公判延へ呈出させて載きたいのであります。財産権が国法によつて保護されている以上利益の分配にあづかつた事実があります。

ふり返つて被告人が国税査察の入つた昭和四拾六年一月時点に死亡したとしてその財産所得が誰に帰属するるかによつても判然とする問題なのであります。

一、被告人は昭和四拾八年に父を亡ひ其の後同年十二月四日に相続税の申告を行つて参りました。その相続財産の内に父哲郎が資産を処分してその金を東海起業に融資してあつた金を引き上げ能部地内の山林田等を買入たものが東海起業の所得として税算出の一部に混入しておるのであります。併し本来父哲郎名儀の遺産相続の一部として相続されるべき性質の物件であるから被告人は相続税の申告の対象として申告致しました。法が国民の為に財産権を保障しておるよう明記されているにも係らず、此の様な所得計算の矛盾の所産として二重に税負担をしなければならない理由は も無いので平等の原則を踏みにじつたなされやうと言わねばならないでせう。此の問題相続税申告の複写を副えて証拠として公判延に呈出させて載きたいのであります。

一、被告人は税を負担出来る範囲で現在脱税額の内金を納付し父祖伝来の家屋敷田畑山林一切を大蔵省に差押え処分されるやうな納税保障を行つて参りました、併しいわれなき理由で課税されるやうな国家権力に対して当然の国民の権利を主張するものであります。

一、財産法各勘定科目の争点については本来事業所得者水谷耕三郎が争うべき問題であり被告人の本意とする処で無かつのでありますが弁護人の要請によつて申請したのであり此の判決について異議を申述する権利も義務も無かつたのであります。

以上

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